問題はテレビ朝日だけではない!

 読売新聞(10月1日(水)8時5分配信)が、9月10日夜の放送の「報道ステーション」の
誤報についてテレビ朝日社長が謝罪したことを報じている。

 記事を一読して、この誤報はひどい、しかしこの手の誤報朝日新聞、テレ朝だけの問題
じゃないと感じた。

 記事によれば、誤報は2点。
 田中委員長は、会見で、竜巻の審査基準の修正を示唆したのに、番組では、周辺の火山に
対する安全審査基準の修正を示唆したと報じた。
 火山の審査基準に関する質問に対し、田中委員長がほとんど応じていたにもかかわらず、
その大部分を省き、回答を拒んだように編集した。

 吉田社長は、「ミスが重なった」と説明したとのことだが、疑問だ。
 竜巻と火山。取材メモでまちがえるはずがない。
 ましてや、田中委員長はほとんどの質問に答えていたのであれば、現場にいた記者がわす
れるはずがないし、映像としても残っているはずだ。

 碓井広義・上智大教授の「世論を反原発の方向へ誘導しようとしたと言われても仕方がな
い」という指摘はそれほど外れていないと思う。
 目の前で起こっている事実を無視して、異なることを報道することは、報道の名に値しな
い。それどころか、読者、視聴者を誤導するという意味で有害だ。

 が、別にこれは朝日新聞、テレ朝にかぎった問題ではない。

 秘密保護法が成立し、わたしが情報保全諮問会議の委員になった後、東京新聞のインタビ
ュー取材を受けたときのこと。
わたしは、情報保全諮問会議でやっていることを説明し、それに大いに意味があることを説
明しつつ、ただしかし、法律の骨格そのものを変えることはできないという限界があること
を指摘した。
 インタビュー記事だったので、記事になる前の原稿を確認させてもらった。わたしの発言
内容は、秘密保護法に対する批判だらけになっていた。驚いた。すぐに取材記者に連絡する
と、「このようなことも言ってましたよね」という指摘。それは否定しない。しかし、それは話
した内容のうちごく一部のニュアンス的なものであって、メインではない。「言ったにはちがい
ないけれど、これはわたしが言いたかったこととかなりちがう。このままであれば、記事その
ものをボツにしてほしい」とお願いした。
 それから幾度かやりとりがあって、結局、わたしが言わんとしたことを内容とする記事に
なった。

 秘密保護法に反対している東京新聞としては、記事にする内容は秘密保護法反対でまとめ
たいし、もともと秘密保護法に反対していたわたしの言葉であれば、そのようなまとめ方も
ありだと考えたのだろう。

 しかし、それはちがう。
 いま、わたしが言っていることを、そのニュアンスを変えないで記事にしなければ、報道
にならないのだ。その記事で、わたし自身が批判されるのは覚悟の上だし、東京新聞にも、
「なんでこんな記事を出したんだ」という抗議があるかもしれないが、それはわたしのイン
タビュー記事を掲載することを決めた時点で覚悟してほしい。

 問題は朝日新聞東京新聞だけではない。
 自社の自論にあわせた報道しかしない報道姿勢はどこであろうと問題なのだ。