地裁の刑事裁判官のやっつけ仕事を叱る

朝日新聞デジタル2016年6月23日12時05分
≪万引き事件、高松高裁が一審破棄「訴訟手続き法令違反」≫

一審判決を破棄したけれど、無罪判決ではなく、「訴訟手続き法令違反」で差戻し。

≪万引き事件で有罪判決を受け、執行猶予期間中に再び万引きをしたとして窃盗罪に問われ、
高知地裁実刑判決を受けた高知市の女性(69)の控訴審で、高松高裁(半田靖史裁判長)
が「訴訟手続きに法令違反がある」として一審判決を破棄し、審理を同地裁に差し戻す判決を
言い渡していたことがわかった。≫

69歳。ここに意味がある。
脳の機能障害があるかもしれない。

≪女性は万引き事件で執行猶予中の昨年8月、高知市内の青果店食品(計1160円)
盗んだとして起訴された。≫

たった1160円の万引きで、たぶん商品自体は店に戻っていても(証拠品とするか、写真で
済ますか。たぶん、後者だろう)、万引き事件で執行猶予中だったために起訴された。

≪一審で弁護側は、感情や行動を制御できなくなる「前頭側頭型認知症とする医師の意見
書を提出。犯行時、心神喪失心神耗弱状態だったとして精神鑑定の実施を求めた。≫

あり得る。

≪ところが高知地裁はこれを却下し、「精神の障害が犯行に与えた影響は、仮にあったとし
ても限定的なものに過ぎない」などと判断。
懲役8カ月の実刑判決を言い渡した。≫

精神鑑定を却下しておいて、「精神の障害が犯行に与えた影響は、仮にあったとしても限定
的なものに過ぎない」などと判断! 実際の犯行時の精神状態について、どうしてそんなこ
とが言えるんだ。日本では裁判官は概して冷淡な印象を受ける人たちだが、それでも、民事
事件担当の裁判官は、原告・被告と分かれても一応、対等な当事者を前に裁判をしているの
で、割とふつうの話が通用する。これに対して、刑事裁判担当の裁判官は、いつも壇上から
裁かれる立場の被告人を見下ろし続けているせいか、やたらと上から目線で、「私が正義
だ」という態度。
若い裁判官の方がこういう態度が特に目立つ。年を取ってきた弁護士として
は、「どうして、お前みたいな若僧にそんな偉そうにされなきゃいけないんだ」と思うことがあ
るが、そこは被告人のために仕事をする弁護人。裁判官にへそを曲げられては困るので、じ
っと我慢。そういう体験がある弁護士は多いと思う。それが理解できずに、ますます偉そうな
態度。ベテランの裁判官は露骨でなくなるけれど、上から目線は変わりない。上から目線に
なった途端、思考の柔軟性を失っていくことに気づいていないし、そんなものの必要性も感
じていないのだろう。

≪21日付の控訴審判決では、犯行当日、短時間に万引きを4回繰り返していることから「責
任能力に疑問を抱かせる無軌道な行動」と指摘。≫

常識的な判断だ。というか、ふつう、こういうふうに考えるだろう。

≪そのうえで「より十分な資料と精神医学の専門的知見を得て、精神障害の有無とその影響
を明らかにする必要があった」とした。≫

今後のこの女性の人生のためにも万引きを繰り返す原因の究明は必要だ。刑務所に入れれ
ばいいというものではない。

ところで、手抜きの、やっつけ仕事のような裁判をした一審の裁判官は少しは反省するだろ
うか。そっちの方が、国民、被告人にとってはずっと大きな問題だ。