移民受け入れという難題

安保法制が成立したことで、自衛隊が海外の危険地域に出てゆく可能性が高くなった。
このことについて、「日本を守るために必要」という賛成論が基盤としてあった。
が、ここには自衛隊が危険地域に出てゆくことだけでなく、住む場所を失った難民の受
け入れを現実的に考えなければならなくなったという問題が横たわっている。

時事ドットコム(2015/10/01-16:35)によると、
民主党岡田克也代表は1日、仙台市内で講演し、安倍晋三首相が先の内外記者会
見で、中東などの難民・移民受け入れの是非を曖昧にしたことに対し、「国民の反発はあ
るが、政府は一定数の難民を引き受けることは必要だと正面から説明しないと、(国際
社会から)日本は二枚舌だと受け取られかねない」
と述べ、受け入れを促した。
また岡田氏は、首相が国連総会で発表した難民などへの支援について、「お金だけ出せ
ば済む話ではない」
と語り、金銭面にとどまったことを批判した。≫

岡田代表の発言内容はなんとも現実味のない無責任な内容だ。物事を深く考えない人た
ちにウケるためだけのものだ。国民の主権者意識が高まらないのは、国会議員が相変わ
らずこういう低レベルの発言を繰り返しているからだ。
「一定数の難民を引き受けることは必要だ」というが、「一定数」とは幾人か。どうやって
選ぶのか。どこに住み、国、自治体はどういう支援をするのか。地元住民との良好な関
係を作れるのか。日中戦争で置き去りにされた人たちに対してさえ、日本(社会)は十分
な対応ができたか。それさえできなかったのに、難民に居心地のいい環境を提供できる
だろうか。大いに疑問だ。

岡田代表に、民主党に、説得力のある具体案があるのか。

これに対して、時事ドットコム(2015/11/07-20:37)によると、
河野太郎行政改革担当相は7日、沖縄県名護市で開かれた国際会議で、安倍政権が
目標とする「名目GDP(国内総生産)600兆円」達成のための手段の一つとして、移民
の受け入れを検討すべきだ
との考えを表明した。≫
河野氏は「外国からの労働力をどうするか、そろそろテーブルの上に載せ、議論を始め
る覚悟が必要だ」と述べた。同時に「この問題は時間もかかるし、感情的になりやすい」と
指摘し、十分に議論を尽くすべきだとの考えも示した。≫

「名目GDP(国内総生産)600兆円」達成のための手段の一つになるには、受け入れる
対象者が日本社会への適応性と一定程度以上の能力を求めることになる。そういう期待
を難民に対してすべきではない。結果として期待に応える人もいるかもしれないが、いな
いと考えた方がいい。このような観点から移民の受け入れを検討すべきだというのは、
あまりにも無責任な思いつきだ。

時事通信 11月9日(月)12時4分配信によると、
菅義偉官房長官は9日午前の記者会見で、河野太郎行政改革担当相が移民受け入れ
の検討に言及したことに関し、「慎重であるべきだ」と述べた。≫

当然、そうなる。

≪一方で菅長官は、「日本再興戦略では真に必要な分野に着目しつつ、中長期的な外
国人材受け入れの在り方について検討を進めていくとされている」
と語り、外国人労働
者の受け入れについては柔軟に対応していく考えを示した。≫

これは難民受け入れ問題に対する回答になっていない。日本が国際社会で一定の役割を果たすとすれば、今後、難民受け入れ問題は避けて通
れない、いつからどのような形で実現できるかわからないが、難民受け入れのために何
を準備すべきか、国会は真剣な検討を始めるべきではないだろうか。