内部告発者が訴えられている

中日新聞(2015年11月22日 16時46分)
≪障害者の通所施設で虐待の疑いに気付き自治体に内部告発した職員が、施設側から
名誉毀損などを理由に損害賠償を求められる
ケースが埼玉県と鹿児島県で起きている
ことが22日、分かった。≫

内部告発した職員が施設に訴えられたということは、施設は自治体に内部告発した職員
を特定できたということだ。

≪障害者虐待防止法では、虐待の疑いを発見した職員は市町村に通報する義務がある。
通報したことで解雇など不利益な扱いを受けないことも定めており、≫

16条1項:障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発
見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
4項:障害者福祉施設従事者等は、第一項の規定による通報をしたことを理由として、解
雇その他不利益な取扱いを受けない。

≪施設側の対応に法曹関係者らから「法の理念を無視する行為。職員が萎縮して、虐待
が闇に葬られてしまう」と批判が出ている。≫

それはそうかもしれないが・・・。
施設側からすれば、内部告発者は施設側にいる者たちにとって裏切り者である。敵対
視し、排除しようとするのは当然だ。
そういう人たちに対して、法の正義を説いたところ
で、「何を理屈をこねているんだ。施設が潰れたらどうするんだ。だれのお陰で障害者が
生活ができ、家族は障害者の世話から解放されていると思っているんだ」くらいの理性も
知性もない現実論
で蹴散らされてしまうに違いない。

問題をそういう建前的正義に設定するからややこしくなる。
なぜ、施設側は内部告発をした職員を特定できたのか。この点こそを問題にすればいい。

障害者虐待防止法18条:市町村が第16条第1項の規定による通報又は同条第2項の
規定による届出を受けた場合においては、当該通報又は届出を受けた市町村の職員は、
その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らし
てはならない。
都道府県が前条の規定による報告を受けた場合における当該報告を受け
都道府県の職員についても、同様とする。

内部告発者が施設側にばれない状態で、行政が施設側を指導して施設の運用が改善
されるならば、施設側はやむを得ないとあきらめるだろうし、障害者は助かる。と同時に、
内部告発した職員は施設から不利益を被ることはない。
上記規定はそのためのものだ。
訴訟を起こされた事案では、内部告発を受けた自治体(職員)が内部告発者を施設側に
教えるか、わかるようにしてしまったのではないか。
そうだとすれば、この点こそが社会的
に問題にされなければならない。