同じ警察署で２人の警察官が自殺に、警視庁は「パワハラない」

朝日新聞デジタル 7月8日(金)5時0分配信
≪警視庁田園調布署（東京都大田区）で昨年１０月と今年２月、地域課の警察官が署内で拳銃自殺を
した問題で、２人の書き置きに同じ上司の名が記されていたことが捜査関係者への取材で分かった。
同庁は調査の結果、いずれもパワハラはなかったと判断したが、管理職として問題があったとして上
司を訓戒処分とした。上司は６月に辞職した。≫

昨年１０月と今年２月。
それがどうして今頃になって報道されるのか。問題の（？）上司が辞職したタイミングに合わせてい
るのではないか。「捜査関係者への取材で分かった」とあるが、いつ取材したのか。
隠そうにも隠しきれない事件ではないか。朝日新聞がいまごろ、他社はどこも出さない、というのはど
ういうことか。
けん銃自殺が、自治体の庁舎や霞ヶ関の行政庁舎、国会議員の議員会館で起こっても、同じような
報道（しない）状態になるだろうか。なるはずがない。どうして、警察についてはこうなるのか。

「パワハラはなかったと判断したが、管理職として問題があったとして上司を訓戒処分」。
パワハラはなかったのに、「管理職として問題があった」ってどういうこと？
訓戒処分は、地方公務員法上の懲誡処分にはない軽い処分。出世にはほとんど影響ないだろう。

≪同庁によると、昨年１０月５日午後９時過ぎ、地域課の男性警部補（当時２９）が署の５階トイレ個室
で拳銃を使って自殺しているのが見つかった。持っていたノートには上司の名前と批判する文言が残さ
れていた。だが、署は昨年末、遺族に対し「自殺の原因は不明で、３０人ほどの署員に聞き取りをした
がパワハラはなかった」と説明した。≫

自殺直後にノートは遺族に見せられているのか。内容確認後、遺族に渡されているのか。警察の所有
物ではないはずだから、警察が自分の物のように持っているということはないだろう。

「批判する文言」とは具体的にどういうことか。
聴き取り調査も怪しい。
みんな、見て見ぬふりをしていた共犯者たちなのだから、自殺直後、一斉に全員を別々に詳しく聞き
取らなければ、口裏合わせをする。、そして、だれかを犠牲者にしなければならない。その候補になっ
たのがその後、辞職することになった上司なのではないか。そうすることで、他は知らぬ顔を通し、ふ
つうの昇進コースを維持する。

「自殺の原因は不明」。
これは常套句。はっきり断定できないかぎり、不明、という言い方をすることは、誤った日本語の使い方
ではない。自殺の原因がかなりはっきりしていても、断定できなければ、「不明」だ。
警察の中で起こっていることだから、自殺した警察官の上司、自殺した警察官を追い込んだ警察官の
上司の監督責任が問題になる。それを問われるとなると、監督能力がないということで、出世の妨げに
なるから、問題にならないようにしたい。だから、「不明」。なのかもしれない。

「３０人ほど」が話した内容の総括が「パワハラはなかった」ということなのだろうが、個々人がどういう
ことを言っていたかについても遺族に詳しく説明すべきだ。その内容は、警察ではパワハラとは評価し
ないとしても、遺族からすればとんでもないパワハラという評価になるかもしれない。
≪約４カ月後の２月２１日午後１０時半ごろ、地域課の別の男性警部補（当時５３）が同じトイレ個室で、
拳銃を使って自殺しているのが見つかった。制服のポケットにメモがあり、１件目と同じ上司を含む男女
３人の署員の名字が書かれていた。≫

１件目と同じ上司！
偶然だろうか。
が、この上司は６月、つまり報道される前に辞職した。なぜだ。

≪同庁は、両方のケースについて自殺の原因を調査。２人とも仕事上のミスやトラブルはあったが、こ
の上司によるパワハラはなく、原因は不明と結論付けた。≫

「２人とも仕事上のミスやトラブルはあった」という。
周囲の警察官から、仕事ができないと、冷ややかに見られていたのではないか。
わたしのところへも、こういう警察官の奥さんから夫を心配する相談があり、本人と面談したことがある。
仕事ができないのは事実だが、それにしてもかなり陰湿な嫌がらせだ。弁護士が警察署に出かけて行っ
て、「人権侵害だ」と訴えれば、だれかしら責任者が対応し、それなりに対応してくれるかもしれない。弁
護士は仕事をしたつもりになれるかもしれない。が、職場に戻る本人は大変だ。それまで以上に周囲の
反応はおかしくなる。本人はますます居づらくなる。そんな展開は見えているから、しない。問題点を整
理して、どうすれば職場で生き残れるか、どういうことだったら本人にできるかを考え、実行してもらう。
その後、自殺したという話は聞かないから、たぶん何とかなっているのだろう。

警視庁は、１件目で「パワハラはなかった」と判断して放置したのだから、２件目も同じ結論にするしか
ない。当然、なにが何でも、「原因は不明」だ。
自殺の原因を揉み消す警察は、警察官の命を粗末にしていることにならないだろうか。
そういう警察に私たちの市民生活は守られている・・・？