ASKAさんのタクシー内の映像の流出の問題点

弁護士ドットコム 11/30(水) 12:32配信
覚せい剤を使用した疑いで逮捕された歌手のASKAさんが、逮捕直前に乗ったタクシー車内の映像
が、テレビの情報番組などで公開されて、インターネット上で物議を醸している。≫

警察車両内の被疑者の姿、顔を撮影、報道することも、事件の軽微さ(覚せい剤自己使用事件は世の
中にいくらでもある。)からすれば、どうかと思う。有名な歌手だからいいんだ、ということか。

ことの発端は
ASKAさんは11月28日午後8時20分過ぎ、警察に用意された車に乗って、自宅から警視庁へ出頭
した。これに先立って、外出していたASKAさんは同日午後6時半ごろ、大勢の報道陣が待ち構える自
宅前にタクシーで戻って来ていた。≫

≪このとき乗車したタクシーに搭載されたドライブレコーダーの映像が11月29日、テレビ各局の情報
番組などで公開された。その映像には、タクシーの後部座席に乗ったASKAさんが、運転手に対して指
示している様子が映っていた。≫

ASKAさんが映っているドライブレコーダーの映像は、タクシー会社が保有する個人データだ。タクシ
ー会社が保有する個人情報が5000人分を超えていれば、個人情報保護法の「個人情報取扱事業
者」に当たる。そうであれば、個人情報保護法の適用を受けることになる(個人情報保護法施行令第
2条柱書)。

≪映像は、タクシー会社か運転手が提供したものとみられるが、ネット上では「プライバシーの侵害にな
るんじゃないか」「どこのタクシー会社だ?」「犯罪捜査以外に第三者に渡していいものか」といった疑問
の声が多数あがっている。≫

タクシー会社が「個人情報取扱事業者」に当たるとすると、個人情報保護法の第4章第1節の個人情報
取扱事業者の義務
の適用を受ける。第1節第23条では、三者提供の制限を規定している。テレビ局
や新聞社はタクシー会社にとって第三者だから、この規定違反が問題になる。
第23条第1項では、4つの場合(第1号〜第4号)を規定している。
第1号(法令に基づく場合)には当たらない。
第2号(人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが
困難であるとき。)にも当たらない。
第3号(公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人
の同意を得ることが困難であるとき。)にも当たらない。
第4号(国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行すること
に対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及
ぼすおそれがあるとき。)にはどうみても当たらない。
ということで、今回の第三者提供は個人情報保護法第23条第1項違反だ。

タクシー会社でも、5000人分を超える個人情報を保有していなければ、個人情報保護法の適用はな
い。

が、この法律の適用があるかないかにかかわらず、ASKAさんとの関係では、ASKAさんの肖像権
を違法に侵害したとして、民法上の不法行為に当たる可能性が高い。
タクシー会社が漏えいしたにせ
よ、運転手が漏えいしたにせよ、タクシー会社は故意又は過失によりASKAさんの肖像権を侵害したと
いうことが言えそうだ。