「村中璃子」さんはジャーナリストなのだろうか?

池田修一教授が名誉毀損だとして訴えている、『Wedge』7月号の記事を書いたという「村中璃子
さんの肩書は、記事の末尾に「医師・ジャーナリスト」とある。
はて?と思った。

わたしの知り合いにも「医師」で物書きをしている人がいる。専門的なこと一般の人向けにわかりや
すく書いている。これなら誰が読んでも理解してくれるだろうなあ、と思う。医療系のドラマの監修を
することもあるし、テレビで疾病の解説をしているのを見かけたこともある。

これと比べると、「村中璃子」さんという「医師」の文章は読者を安心させたり楽しませてくれるもので
はなく、書かれている対象者を挑発し貶し怒らせるような書き方になっている。最終ページに「池田
修一教授の学部長・学長への執念」を配置したのは、ここが一番言いたかったということなのか?
「医師」らしいセンスを感じない。

「ジャーナリスト」という点ではもっと疑問だ。
「村中璃子」さんは、記事で批判対象にしている池田修一教授を直接取材していない。直接取材を
しないで断定して書く。
周辺取材にしても、『Wedge』7月号の記事をみるかぎり、A氏だけ。それも
中途半端に切り上げている。これでは井戸端会議の噂話を触れ回っている困った人と何も変わらな
い。ジャーナリストの肩書で食べている人たちは、同業者として、こういう「ジャーナリスト」をどう思う
だろうか。どう思われるかということを「村中璃子」さんという「ジャーナリスト」は考えないのか?

それと名刺。ふつうジャーナリストは取材相手や出遭った人たちに自分の氏名(ペンネームでもいい)、連絡先(自
宅住所や事務所住所)、連絡方法(電話番号、ファックス番号、メールアドレス)を書いた名刺を手渡
す。
ところが、「村中璃子」さんという「ジャーナリスト」は、取材相手や出遭った人たちに名刺を渡さな
いことにしているらしいのだ。
わたしは「村中璃子」さんを知っている人たちならだれか名刺を持って
いるだろうと思って尋ねてみたが、わたしの知り合った範囲の人たちはだれも持っていなかった。「村
璃子」さんのオフィシャルサイトにも住所や電話番号など所在を特定する情報はない。

「村中璃子」さんは、裁判所が訴状を送達するためであっても、裁判所にさえ本名も住所も教えないと
いう。自分が許容する者以外は相手が裁判所であろうとだれであろうと断固として近づかせない。こ
んなジャーナリスト、これまでお目にかかったことがない。

かつてジャーナリストの櫻井よしこさんが名誉毀損で損害賠償請求の裁判を起こされたとき、代理人
をつとめたことがある。訴状は櫻井さんの自宅兼事務所に送達されて来た。一審は櫻井さんの全面
勝訴だったが、控訴審では逆転全面敗訴。このときわたしは櫻井さんの事務所の財産が差し押さえら
れるかもしれないと考えた。結果、実行はされなかったが。その後この事件は最高裁で逆転し櫻井さ
んの全面勝訴で終わり、一件落着。

自分の書いたことでどのような展開になろうともすべて一身に引き受けるというのがジャーナリスト
という肩書で仕事をしている個人の宿命ではないのか。
櫻井よしこさんを近くでみていてそう思った。

そういう観点からすると、「村中璃子」さんがジャーナリストを名乗ることに強い違和感を感じる。そもそ
「村中璃子」さんという「ジャーナリスト」はひとりの人間として実在するのかという疑問さえ抱く。