「捏造」は評論ではなく、事実だ!

対ウェッジ社、大江紀洋氏、村中璃子氏の名誉毀損訴訟は、驚きの連続。今日、第3回口頭弁論期日も
驚きだらけだった。

前回の第2回口頭弁論期日(12月6日)。
そこでは、1月6日までに被告村中が原告の訴状に対する認否反論の書面を提出する
これに対して、原告は2月6日までに認否反論の書面を提出する
ことになった。

ところが、被告村中は年末12月26日に求釈明書を原告に送り付けてきた。自分の質問に答えろ、と
いう原告に対する要求だ。こんなことは12月6日の手続では確認されていなかった。裁判所でのやりと
りなどお構いなしの態度。

予定にない求釈明書を年末に送ってくるような被告が1月6日の期限に準備書面を送って来ないだろう
と思っていたら、本当に送って来なかった。

仕方がないので、1月10日に原告側から、求釈明書には回答しないこととあわせて、「前回期日におい
て、被告村中は、平成29年1月6日までに主張を提出すると述べたが、現在も主張書面は提出されてい
ない。」と書いた準備書面を裁判所と被告にファックスした。
そうしたら、その日のうちに被告村中から準備書面(1)が届いた。
が、文書の日付は「1月6日」になっていた。準備書面に書く日付は、ふつう、書面を実際に提出した日か
次回の口頭弁論期日にしている。それを被告村中は、実際に自分が書面を提出していない「1月6日」と
いう過去の日付で送ってきた。裁判所に提出する日付についての常識も無視。ただ、ファックスの送信記
録には「2017 01/10」とある。

被告村中は、1月13日にも求釈明書に関する意見書を送りつけてきた。
原告は、2月6日に認否反論の書面を提出して、被告村中の求釈明は的外れであり、回答する必要性も
ないと対応した。

すると、被告村中は、2月13日に求釈明に関する意見書(2)を送って来た。
そして14日の第3回口頭弁論期日。
最初は、型どおり、被告村中が準備書面(1)を提出、原告は準備書面(2)を提出した。
ここからが、ふだんの法廷にはない異様なやりとりがあった。

裁判長が被告村中に対して、被告村中が求釈明書を出していることの意味を尋ねた。名誉毀損の裁判は、
原告が記事のどの部分で名誉毀損されたと主張したら、後は、被告側で、1)「公共性がある記事だ」、
2)「公益目的で記事を書いた」、3)「真実だ(又は真実と信じるにつき相当の理由がある)」を証明する
だけ
の裁判。
この裁判でも、原告は記事のどの部分で名誉毀損されたと主張したのだから、訴えられた側は、1)2)3)
を主張立証するだけのこと。被告側から原告に質問することは通常ない。それを被告村中は延々と繰り
返す。ちなみに、被告ウェッジ、被告大江からは求釈明は出ていない。

被告村中代理人弁護士は、マウス実験のデザイン、データ等を明らかにしていただきたいという趣旨のこ
とを言う。
しかし、記事の特定部分が名誉毀損に当たるかどうかは、マウス実験のデザイン、データ等とは関係な
い。
原告はマウス実験の批判から逃げるつもりなどない。信州大学の調査でも答えている。この裁判では、
根拠もなく「捏造」と記事に書いて公表したことを問題にしているだけだから、答えないだけのことだ。
被告側は、今更、原告側にあれこれ質問する必要などなく、「捏造」と記事に書き立てた根拠を説明すれば
よいだけのこと。だから、原告側は相手にしないのだ。
裁判長から原告代理人弁護士に意見を聞いてきたので、「必要ないと思います」と答えた。裁判長から原
代理人弁護士に対してそれ以上の質問はなかった。

裁判長は話を変えて、被告ら側に、訴状で問題にしている「捏造」について、どのような事実を「捏造」と
書いているのか具体的に主張してほしい、と話しかけた。
そのとき、裁判長は、広辞苑の説明を引き合いに出して、「捏造」とは「事実でないことを事実のようにこ
しらえることをいう」とあるが、社会一般では「捏造」はこのように理解していると考えられる、原告が問題
にしている記事の部分でも幾度も「捏造」と書いている、それぞれ内容が違うのか同じなのかもわからない、
記事に書かれていることから読み取れる内容として個別に明らかにしてほしい。それが裁判長から被告側
へ求めたことだった。

読者がその記事の内容を信じることによって原告の名誉が毀損されるのだから、「捏造」の内容の説明は
記事の内容でしなければならない。当たり前の指摘だ。

これに対して、被告村中代理人弁護士は、マウス実験が科学的に稚拙だという評価を言っているだけだ
という趣旨の弁解をした。
それだったら、そう書けばいい。そう書かないで「捏造」と書いたのだから、どのような捏造があったかを説
明しなければならないのだ。捏造は評価ではない。言葉で仕事をしている弁護士がそんなことを言ってい
いのか。

裁判長は、広辞苑に書いてある定義を繰り返し説明し、被告らに、事実でないことは何か、事実のように
こしらえたことは何か、を具体的に説明してもらいたいと言った。
特にむずかしいことを言っている訳ではない。

ところが、被告村中代理人弁護士が、いま裁判長が言ったことを書面で出してほしいと言い出した。
法廷で裁判長に向かって、書面を出せ、という弁護士を初めてみた。裁判長が言ったことを確認したけれ
ば、書記官が作成するそのときの口頭弁論期日調書をみれば書いてある。これも弁護士にとっては常識。
だから、裁判長の言ったことをはっきり記録にしたいときは、「調書にちゃんと書いてください」と言う。裁判
長が書面を出す必要はない。
裁判長は、一瞬絶句した感じで無言。それから「もう一度言います」と言って同じ内容の説明を繰り返した。

被告村中の援護射撃のためか。被告ウェッジ代理人弁護士も裁判長に、そのように特定を求めることの意
味があるのかと質問した。裁判長は、通常の意味として「捏造」とは事実の摘示を言う、この裁判の立証命
題を明らかにしたいということだ、と説明した。
被告側はそろって、「捏造」は論評(意見)だと主張している。それに対して、裁判所はそういう考え方を採
用しないということをはっきりと言ったのだ。
意見はいろいろあっていいが、事実は1つしかない。捏造につ
いて言えば、どういう捏造があったかなかったかだけだ。
それでも、被告村中代理人弁護士は、裁判長の説明に逆らうのか、科学的意味のない実験であるから捏
造と書いた
のだが、と言う。意味があるかどうかは評価。それを普通、「捏造」とは言わない。
裁判長は、これ以上議論しても仕方がないと考えたのか、それならそう書いてもらってもいいです、と締め
括った。

こうして、被告らは、3月14日までに、記事中の「捏造」が具体的に何を指すのかを説明する文書を提出す
ることになった。被告ウェッジ社と被告大江が同じ内容のことを書いてくることは、代理人弁護士が同じだか
ら同じになるだろう。しかし、被告村中が同じ内容になるかはわからない。
これに対して、原告は3月末日までに反論書面を提出することになった。

次回期日は、4月11日(火)午前10時、527号法廷
傍聴者が多く、原告、被告、裁判所間で重要なことをいろいろ議論しているので、次回も公開法廷で手続を
することになった。