すでに行われている適性評価はどうなっている?

 政府は、法律上の根拠のないまますでに適性評価が行われていることを
認め、だからこそ恣意的な運用にならないよう法的整備が必要なのだ、と
いう。

 そして、法案として提案しているのが、秘密保護法第12条に規定されている
7項目というわけだ。

 このようなものをいくら調べても、情報漏えいを防ぐために役に立たない
し、不当な人事や差別が起こるだけだ、と説明してきた。

 で、さらに疑問。
 すでに各省庁、警察庁都道府県警察には幾人の職員が適性評価に合格
して職務に従事しているのだろうか。現に行っている適性評価の項目は
どうなっているのだろうか。一律に同じ内容なのかちがうのか。一律に
同じなら、だれが作っているのか。ちがうのなら、それぞれの省庁・警察
ではだれが作っているのか。

 国会では、現在行われている適性評価の項目すべてを明らかにすべきだ。

 特定有害活動との関係に関する事項としてどのような項目があるのか。
 テロリズムとの関係に関する事項としてどのような項目があるのか。
 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項としてどのような項目があるのか。
 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項としてどのような項目が
あるのか。
 薬物の乱用及び影響に関する事項としてどのような項目があるのか。
 精神疾患に関する事項としてどのような項目があるのか。
 飲酒についての節度に関する事項としてどのような項目があるのか。
 信用状態その他の経済的な状況に関する事項としてどのような項目が
あるのか。

 これらの事項は、すべてが法案の7項目に過不足無く当てはまるのか。

 7項目を法律で規定するということは、「特定秘密」を扱う省庁・警察では、
7項目の全事項についてチェックしなければならない。チェックしない項目を
残すことは違法である。
 逆に、7項目以外のチェック項目を作ることは違法である。私生活に関する
個人情報であるから、即、プライバシー侵害の問題が生じる。

 イスラム教徒無差別個人データ違法収集事件(2010年10月発覚)では、流出
資料によれば、警察庁、警視庁はテロ対策を名目に、国内のイスラム教徒を
無差別に監視調査の対象とし、その個人情報を違法に収集しており、警視庁
だけでも一般職・巡査を含む140人程度の署員が主要メンバーとして
関わっていた。
 これらの職員、警察官全員について適性評価を実施していたのか。そして
全員が合格したのか。
 このような違法調査に大量の警察職員を使っている現状からすれば、ほとんど
すべての警察官について適性評価を実施し、ほぼ全員が合格して、秘密情報を
取り扱わせることになるのではないか。・・・ホントに厳格にチェックしてほぼ
全員が合格できるのだろうか。怪しい。警察官の日常の仕事ぶり、法廷での証言
態度などをみていると、厳格な運用をすると、かなりの警察官が不合格になる
ような気がするけど。

 実際にこの制度が法律になったときには、7項目の具体的内容は好き勝手に
どんどん増え、どんどん変わっていくのだろう、国民の知らないうちに。
 そうであるだけに、抽象的な理屈のやりとりではダメだ。適性評価制度の
運用の現実がどうなっているか。そこから、適性評価制度の実効性や各項目の
合理性を1つ1つ検討すべきだ。
 「よその国がやっているから」では何ら合理的な説明にならない。