誰のための、何のための、調査なのか

 これは、毎日新聞の記者・日野行介さんが書いた福島原発事故 県
民健康管理調査の闇』(岩波新書
の帯文。
 この調査には胡散臭いものを以前から感じていた。読み進むに従い、
秘密、秘密の連続に驚くと同時に、緊張感が高まった。
 まるで、自分のことを批判されているような気持ちになった。

 福島県庁が、調査をすることも、調査結果を公にすることも、隠そう
隠そうとしているのに、驚いた。県民健康管理調査は、1945年8月
に広島、長崎に原爆投下した直後に現地入りしたアメリカの医師らがし
ていた調査によく似ている!

 県民健康管理調査の検討会議には、2011年5月始まっているが、
公開される会議の直前に常に秘密会がもたれていた。何のために?

 山下俊一長崎大学教授と神谷研二広島大学教授が福島県医大副学長
の肩書で検討委員になり、秘密会に加担していたのにも驚いた。

 「不安をあおらないため」「パニックを防ぐため」だったという弁解
がなされているらしいが、かなり怪しい。こんなものは、被爆を心配し
ている当事者にとって何の助けにもならない。そんなこともわからない
とすれば、呆れる。

 検討委員が恐れたのは、福島県民や国民から期待されている人々であ
りながら、それが実情を明らかにすることで、多方面から批判、非難、
疑問が殺到し、自分たちの権威が失墜することだったのではないか。
県職員が恐れたのは、仕事がスムーズに行かなくなることで、残業が膨
大になり、上司から叱責され、順調な出世の妨げになることだったので
はないか。
 どれも大義になりえない!

 ところで、いま、わたしは情報保全諮問会議の一メンバーになって、
秘密保護法の内容(基準や政令の中身など)を細かく書き込む作業をし
ている。

 いろいろな人から、「情報保全諮問会議が秘密裏に行われている」と
批判される。その都度、「いや、もともと会議体ではないので」と説明
している。それは本当。それが公になると、「まさか、君がそんなこと
を言っていると思わなかった」と非難され、「ああすべきだ」「こうす
べきだ」という注文もいろいろ出て来るだろう。秘密裏の方がやりやす
いことは確かだ。

 しかし、重要な制度の中身が作られる過程のほとんどが秘密であって
いいはずがない。できるだけ、公表・公開されるべきだろう。
 諮問会議のメンバーだけでなく事務局にとってもとんでもない迷惑だ
ろうが、強く批判されている法律であればこそ、中身作りの公開度を高
くして、少なくとも誤解に基づく批判だけでも少なくすべきなのだろう。