都議会議員の品のない野次について

 東京都議会の議員の暴言野次が話題になっている。
 新聞、テレビ、雑誌が大きく取り上げ、海外のニュースでも取り上げている。が、こんな
ものは事件ではない。日本の地方議会の日常風景だ。
 報道は単なるお祭だ。

 暴言野次があった時点で、議長は議事進行を妨げる行為として、議長権限で、直ちに
発言者を注意して、発言者を牽制すると同時に、他の議員が悪乗りしてさらに暴言野次
をすることを防ぐべきだった。それを、黙っているものから、「学級崩壊」並の都議会では、
次々に品のない、アホみたいな野次が続いた。知事は笑っていた。
 その場の瞬間の対応でさっさとケリがつく些細な問題をここまで大きくしたのは、議長
の責任だ。はっきりしている。

 ひどい暴言をした議員はこれからも名乗りを挙げないだろう。そもそもこれまで同じよ
うなことを言っていても、議長から注意されたこともなければ、マスコミの攻撃にさらされ
たこともなかった。それがどうして今回は?批判する方がどうかしている。そう考えても
おかしくない。

 ところで、議長がだらしないのは、どうしてなのか。
 議長が議員だれからも尊敬されているような人がなっていれば、こんなことは起こらな
い。日本の地方議会では、議長は最大会派の中で順番でなる役職になっている。議長
は一般議員とちがって、特別手当がつくおいしい役回りだ。そのため、議長は最大会派
のお陰でなっている地位なので、議長になった議員は、節操のない議員の態度や言動
に対して何も言えないのだ。この力関係(?)をどうするかということをしっかり考えない
と、同じようなことは、これからも全国各地の議会でいくらでも繰り広げられるにちがい
ない。

 もう幾年も前のことだが、群馬県内の町議会を傍聴していたときのこと。最古参とおぼ
しき女性の革新系議員が、自分の気に食わない議員が発言している最中、ずっと、品の
ない野次を言い続けていたのを目の当たりにして驚いた。お陰で、革新系議員に対する
イメージがかなり広がった。この議員の野次で、傍聴席から議員の発言が聞き取れない。
で、私が立ち上がって、手を挙げて、議長に向かって、「議長。この女性議員の野次がう
るさくて発言している議員の言っていることが聞き取れないので、野次を止めさせてくだ
さい」と言った。すると、議長が反応する前に、この野次議員とその仲間とおぼしき数人
の議員がわたしの方を振り返って、わたしを見た後、「議長、騒がしい傍聴人がいるから
退場させろ」と言ったのだ。議長にしてみれば、わたしの不規則発言もその後の議員らの
発言も想定外の事態。議長はどう整理したものか判断できず、「暫時休憩」。休憩時間中
にわたしが議長のそばまで行って、「議員の野次がうるさいので」と話し始めると、女性議
員とその仲間の議員が近寄ってきて、「傍聴人が議場に入ることは許されない。出て行け
」と言った。議長も「出てください」。で、わたしは議場をあとにすることになった。

 このとき、ひどい野次をいう議員に保守系、革新系の区別はない、という教訓を得た。

 日本では地方議会は必要なのだろうか。ときどき頭をもたげる基本的な疑問だ。