野々村元県議の裁判 弁護活動が気になる

今日、神戸地裁(佐茂剛裁判長)で、政務活動費約913万円をだまし取ったとして、
詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪で起訴された野々村竜太郎・元兵庫県
の初公判があった。

政務活動費の使い方がおかしい議員はいくらでもいる。野々村元県議はそれが極
端だったのと、とくに号泣記者会見をしてしまったことで有名になってしまっただけだ。
野々村元県議を刑事裁判で裁いてもらっても、全国の地方議会の議員の政務活動
費の支出が浄化されるわけではない。野々村元県議のおかげで、「政務活動費っ
て、どうも胡散臭いカネらしい」ということを教えてもらったのだから、自分の住む自
治体の議会の政務活動費の情報公開請求をぜひやってみてほしい。しばらく眺め
ていれば、あっちにもこっちにも疑問が出て来るはずだ。

テレ朝のお昼のワイドショーに呼ばれて、コメントをしてきた。
出番を待っている間に、スタッフに渡された今日の朝刊記事を見比べて読んでいた。
ふだんは、全新聞を買うことも見比べて読むこともないのでおもしろかった。そこで、
記事の間違いをみつけた。
野々村元県議は、2011〜2013年度の3年間に受け取った計1684万円の政務
活動費(12年度までは政務調査費)全額に相当する金額を返還、寄付(政務活動
費条例で返還義務がない分は「返還」ではなく、「寄付」になるはず)しており、起訴
された金額はそのうちの約913万円だった。1684万円を「返還している」と書くの
はまちがいだ。
それと、1684万円について起訴されていると書いている新聞があった。これは明
らかな思い違い、誤記だ。1紙しか読んでいないと気づかないことが、何紙も読み比
べると、それぞれ似ているようで書き方がちがう。おもしろい。

で、本番では、実際の今日の公判手続の内容についてコメントすることになった。
野々村元県議は「虚偽の収支報告書に基づいて返還を免れたことは決してござい
ません」
と起訴内容を否認した。

驚いた。
弁護士という職業柄、野々村元県議の弁護人はどういう戦略を考えているのだろう
かと考えた。
検察が野々村県議の供述だけで起訴するはずがない。政務活動費の支出について
は、領収証などの一定の資料を添付して議長、首長に報告することになっている。
だから、この裏付資料がまともなものでないと、それが実際にほとんど出張していな
かったことの客観的な証拠になってしまう。
これまでわたしは十数年、自治体の政務活動費の支出状況をチェックする仕事をして
いた。領収証がついていても、みるからに疑わしいものをときどき目にして、是正を求
めてきた。みれば判るのである。
否認の方針で戦う以上、それで結審までの間に検察の立証を潰さなければならない。
どうやるのだろうか。手堅い活路を見出さないと、野々村元県議は反省がないとして
厳しい判決になってしまう。
あるいは、弁護人は野々村県議を説得することができなかったのかもしれない。

弁護活動の点でもう1つどうかと思ったのは、昨年11月24日に予定されていた初公
判に野々村県議が突然、欠席し、今回、法廷への出頭を確保するために勾引された
ことだ。裁判所が「この人はまた出頭しないかもしれない」と強く疑ったということだ。

弁護人の説明では「自宅前にマスコミ関係者がいて精神的に不安定になり、本人が
出廷を拒んだ」
とのことだ。
号泣記者会見で有名になってしまった挙句、起訴されたとなれば、世間の関心が集ま
るのは当然のことだ。(わたしは、問題のある議員はいくらでもいる程度問題、対応の
上手い下手に過ぎないと思っている。)
裁判の当日の朝、マスコミが野々村県議の自宅に殺到することを、弁護人は当然予
測し、対策を講じておくべきだった。
野々村元県議がひとりで自宅を出て裁判所まで
来ることは精神的にとてつもなく大変にちがいない。弁護人としては、野々村元県議を
前日から自宅以外の場所に宿泊させて、そこから野々村元県議と一緒に裁判所に出
頭すればよかったのではないか。

弁護人の弁護活動に注目したい。