兵庫県議会の野々村竜太郎議員の暴走

 兵庫県議会の野々村竜太郎県議(47)(無所属)が1日の記者会見で号泣し
ながら使途を明確に説明しなかったことを受けて、県議会事務局や県広聴室に、
辞職などを求める抗議の電話やメールが殺到しているそうだ。

 あの場面をみれば、だれもが「辞職しろ!」と言いたくなる。
 が、ちょっと待って。問題なのは、野々村議員だけだろうか?

 野々村議員のお陰で、「政務活動費」という言葉が脚光を浴びている。

 政務活動費は、地方自治法100条14項で規定されている制度。
 「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査
研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における
会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、
当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を
充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。」

 かつては、地方自治法にも規定されていなかったし、条例もなかった。お金持
ちの自治体(都道府県や市)は、首長が仕事をしやすくするために(言い換えれ
ば、議会(議員)に執行部の仕事を邪魔されないために)、テキトーに、お手盛
りで公金を渡していた。

 これに、全国市民オンブズマン連絡会議が目を付け、「法的根拠のない支出
は違法だ。金返せ」と、全国各地で住民訴訟を起こした。・・・議員を庇う裁判所
もあったが、かなりの裁判で市民オンブズマン側が勝訴した。

 で、議員たちはあわてて、法的根拠をつくることにした。
 が、ここが、また、甘い。
 彼らは、法的根拠さえできれば、いままでどおり自由に使える、と思った。
 ちがうのだ。
 法律や条例などの公的制度にすると、その制度に沿った支出以外は違法!
なのだ。だから、この点を理解していない会派、議員は、相変わらず、裁判で負
けるはめに陥った。

 だから、歴史的にみると、野々村議員の政務活動費の使いっぷりは、異常で
はあるけれど、「伝統」をしっかり引き継いでいるのだ。
 で、野々村議員の所属する兵庫県議会。
 兵庫県政務活動費の交付に関する条例の規定をみると、9条(収支報告書)
で、会派又は議員に、収支報告書の提出を義務づけている。その内容は、
 (1) 会派名及び代表者氏名又は氏名
 (2) 交付を受けた政務活動費の総額
 (3) 交付を受けた政務活動費に係る支出の総額並びに次に掲げる支出項目
別の額及び当該項目ごとの主たる支出の内訳
  ア調査研究費
  イ研修費
  ウ会議費
  エ広報広聴費
  オ要請陳情等活動費
  カ資料作成費
  キ資料購入費
  ク事務所費
  ケ事務費
  コ人件費
 (4) 交付を受けた政務活動費の総額から政務活動費に充てるべき支出の総
額を控除して残余がある場合は、当該残余の額

 かつては、大きな項目に総額だけ書けばよかった。だから、都議会のように議
員ひとりあたり月額60万円も政務活動費があるところでは、大きな会派では年
1億円以上の金額の収支がA4の用紙、たった1枚で「報告」されていた!

 それに比べれば、兵庫県条例はかなりまとも。都議会もいまは詳細な報告が
必要になっている。それでも、とにかくテキトーに書くことだってできてしまうので、
ごまかしを見抜くのはむずかしい。

 そこで、兵庫県条例14条4項では、領収書やその他の証拠書類を一緒に提出
することを義務づけている。これがあるかないかは、雲泥の差。領収書をコピー
でよいとしている議会もあるようだが、それではインチキができてしまう。原本で
なければダメ、とすべきだ。

 兵庫県条例10条(政務活動費の返還)の4項
 「政務活動費の交付を受けた会派又は議員は、その年度において交付を受け
た政務活動費の総額から政務活動費に充てるべき支出の総額を控除して残余
がある場合、当該残余の額に相当する額を速やかに返還しなければならない。」
 違法な支出や出鱈目な記載などの分は、「政務活動費に充てるべき支出」に
該当しないから、返還義務がある。

 こういう義務があるのに、返還しない議員がいるかもしれない、ということで、
条例10条5項では、次にように規定している。
 「知事は、前各項の規定の適用がある場合には、政務活動費の交付を受けた
会派又は議員に対し、返還を命ずることができる。」

 野々村議員は、地方自治法100条や、兵庫県政務活動費の交付に関する条
例の条文を読んでいるのだろうか。記者会見を見る限り、全く読んでいない。読
んでいれば、あのような説明(?)は絶対にできない。同情の余地なし!

 世の人々は、野々村議員の記者会見をみて、あまりの滅茶苦茶ぶりに、驚き、
呆れ、笑ったかもしれない。
 しかし、彼の場合が極端だっただけで、政務活動費を受け取っている他の地
方議員全員がクリーンというわけではない。現実はどこの議会も問題だらけだ。
議長も議会事務局職員も、それがわかっていて、言い出せない。知事や市長も、
議会(有力会派)を敵に回すと仕事がやるにくくなるので、見て見ぬふり。実際に
は全国の地方議会の政務活動費の支出の実態は、月額支給額の多寡に比例し
て疑問だらけだ。
 今回、野々村議員が吊るし上げ状態になっているのは、彼のやったことのひ
どさもあるけれど、それ以上に彼が有力会派に属していないことが大きいので
はないだろうか。

 ぜひ、自分の地元の都道府県議会や市議会で、昨年度1年分だけでいいから、
政務活動費の情報公開請求をしてみては。あなたの地元にも???の議員が
たくさん見つかるはずだ。