産経新聞前支局長に無罪判決

毎日新聞 12月17日(木)17時8分配信
≪【ソウル大貫智子】ウェブサイトに掲載したコラムで韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉
を傷つけたとして情報通信網法違反(名誉毀損〈きそん〉)に問われた産経新聞の加藤達也前
ソウル支局長(49)の判決公判が17日、ソウル中央地裁であった。李東根(イ・ドングン)裁判
長は「記事には朴氏個人を誹謗する意図はなかった」と認め、無罪(求刑・懲役1年6月)を言
い渡した。≫

え、そういう理由で無罪判決?

日本の刑法230条の2では、名誉毀損罪の免責について以下の3つを要件としていて、全部
が揃わなければならない。

1)公共の利害に関する事実であること
2)公益を図る目的であること
3)真実であること(真実と信じるにつき相当の理由があること)の証明があったこと

1)2)が揃っていても、3)がなければアウト、有罪なのだ。

韓国の刑法はどうなっているのだろうか。

記事の概要はこういうもの。

≪コラムは昨年8月、同社の電子版で掲載された。朴大統領が昨年4月の客船セウォル号沈没
事故当日、所在が不明だったと野党側から追及された国会答弁を紹介。大手紙・朝鮮日報のコ
ラムや証券筋の話を引用しつつ、元側近男性との密会説が流れていると書いた。≫

保守系市民団体が同8月に告発したのを受け、検察が同10月、「中傷目的で報道した」とし
て情報通信網法違反で在宅起訴。日本の外務省が韓国側に「極めて遺憾で事態を深く憂慮して
いる」と伝えるなど日本側で反発が広がり、今年11月の日韓首脳会談でも安倍晋三首相が言及
するなど、外交問題に発展していた。≫

保守系市民団体が告発?
どういう団体か知らないけれど、外交問題に発展しかねない事案であることは明らか。見逃した
からって、どうということもないコラムだ。それを検察が捜査、起訴するというのはどういうセンス
なのかなあ。
情報通信網法違反? 名誉毀損罪とは違うのか? インターネットを使った名誉毀損という感じ
か。

日本の名誉毀損罪は親告罪になっているから、被害者が告訴しなければ刑事裁判になることは
ない。公開裁判になることで、ますます名誉を損なうおそれがあるから、公開裁判で事実が晒さ
れることになることを本人がよしとするかどうか、被害者本人の意思に委ねるという考えだ。

それが、韓国法ではだれでも告訴できるようになっていて、被害者が拒絶を明示したときに、起
訴できなくなるという構造らしい。
保守系市民団体の告発について、朴大統領は沈黙していた。それで、検察は捜査、起訴ができ
たわけだ。朴大統領は自分が沈黙したことによって招いた事態をどう思っているのだろうか。
≪公判で加藤前支局長はコラムには公益性があり、取材も十分だったなどと無罪を主張。一方、
裁判長は公判で朴大統領と男性は会っていないとの判断を示し、コラムに公益性があるかどう
かが争点となっていた。≫

裁判所は真実性を認めなかった。日本の刑事裁判であれば、これでアウト、有罪になる。それ
が無罪になったのは、「記事には朴氏個人を誹謗する意図はなかった」という点のようだが、
本の刑法でいえば、それは2)の要件を充たしているということであって、3)の要件を充たして
いることにはならない。
どういう理屈で無罪になったのだろうか。判決文をちゃんと読まないとわからないのかもしれない。