高校生に殺された新生児の未来

朝日新聞デジタル 2月25日(木)11時33分配信
≪産んだばかりの男児を殺害したとして、静岡県警は25日、いずれも静岡県東部に住む
10代の女子高校生と、交際相手の10代の男子高校生=ともに死体遺棄容疑で逮捕=
を殺人容疑で再逮捕し、発表した。2人は「悩んでどうすることもできなかった」と話すなど
容疑を認めているという。

県警によると、1月下旬に女子高校生が自宅の浴室で男児を出産後、2人で男児を屋外
に運び出し殺害した疑いがある。司法解剖の結果、男児の死因は窒息死で、遺体に目立
った外傷はなかった。遺体はタオルにくるまれた状態でバッグに入れられ、男子高校生の
自宅に置かれていた。男児は2人の間の子とみられるという。

女子高校生が今月10日、体調不良で病院に行き、診察を受けた際、産後の兆候だと気
づいた医師が事情を尋ね、男子高校生が病院に遺体を運んできたという。病院が通報し、
県警は男子高校生を10日に、女子高校生を15日にそれぞれ死体遺棄容疑で逮捕して
いた。≫

2人の高校生が追い詰められたのはわかる。それで、いなければいいのに、と2人合意の
上で殺してしまったのか。
でも、遺体に目立った外傷がないこと、遺体をタオルにくるんでいること、男子高校生の自
宅に置いておいたことは、生まれてきた赤ちゃんへの憎しみや煩わしのような、虐待事件
にある感情とは全く違う。自宅に置いておけば、いつか家族にわかってしまい、警察に通
報されることになる。発覚は時間の問題だった。実際には、男子高校生自ら病院へ新生児
の遺体を運んで来て、事件は発覚した。自首のようなものだ。
ふたりはホッとしているだろう。

殺された新生児。
経過からすると、2人の高校生のどちらの家族も赤ちゃんが生まれてすぐに殺されたことを
知らないだろう。そうだとすると、新生児にはまだ名前がないし、2人の高校生の家族にも
新生児を家族として受け入れる素地がないのではないだろうか。

新生児の葬儀はだれが喪主になり、新生児はどこのお墓に入るのだろう。
どちらの家のお墓に入るにしても、戒名をつけ、死亡年月日を墓石に刻むとなると、墓参に
訪れる人は毎回、生まれてすぐに殺された新生児と向き合うことになる。やがて、女子高校
生、男子高校生が(たぶん)何十年後かに亡くなってお墓に入ったとき、さきに来ている新
生児との同居が始まり、永遠に続く。

こういう不都合を回避しようとすると、どちらの家のお墓にも入れない、という選択になる。
生まれたときに邪魔者扱いされ、死んでからは孤独が永遠に続く。亡くなっているとはいえ、
過酷な人生だ。

殺された新生児が生きている人たちに難問を突きつけている。